絵画、美術館が背中を押してくれる短編集
ハッピー・バースデー … 2代に渡るシングルママの生き様。母は2歳の私を抱いて、生まれて初めて〈ドービニーの庭〉を見た。
あの絵のまえで、母と私は、ひとしく赤ん坊だった。
〈あの絵〉のまえでより
窓辺の小鳥たち … 夢を追って海外へと飛び立つ、高校時代からの彼氏への想い。それぞれに飛んで、もう一度この窓辺に戻って来よう。
あの絵のまえで、十七歳になったばかりの私の手を握った懐かしい手。
〈あの絵〉のまえでより
檸檬 … 駅のホームで気になった檸檬を持った女の子。トラウマを捨てて、私もあの子のように、心のままに絵を描きたい。
あの子のように、あの絵のまえで、画家と対話しながら、今度こそ描き上げよう。
〈あの絵〉のまえでより
豊穣 … 小説家になりたい主人公と、隣に越してきたおばあさんのあたたかい交流。主人公はおばあちゃんに育てられたが、死に目に会えなかったことを後悔していた。
いつか、あの絵のまえで、ほんとうに会えるといいわね。あなたのおばあちゃんに。
〈あの絵〉のまえでより
聖夜 … 10年前に息子を冬登山で亡くした夫婦の聖夜。帰ってきたら紹介したい人がいる、との約束が、10年越しにある形で叶うことになる。
私たちは、そのとき、あの絵のまえでひとつになった。
〈あの絵〉のまえでより
さざなみ … 退院後、旅代を奮発して主人公が向かったのは地中美術館。モネの〈睡蓮〉の前で出会った老人の正体は。主人公の新たな1歩の物語。
また、お会いしましょう。あの絵のまえで。
〈あの絵〉のまえでより
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